先日、9月4日から7日まで、大阪体育大学の「オリンピズム考」という講義の臨時非常勤講師として任用され、15回の講義をやりました。70歳を迎えるこの年を、ぼくの教師生活の最後と心得ていましたので、この講義を人生さいごの講義とするつもりで引き受けました。
  引き受けたからには、また人生さいごの講義でもあってみれば、それなりに真面目に(結局はいつもそうなのですが…)やったつもりです。そんな節目となる講義の全体を少し編集しなおして、アップロードしておくことにします。
  今後、類似ないし同一の講義を担当される方があれば、一定の参考になるのではないか、またそうして欲しいと思っています。もし、質問があれば、どうかお寄せください。

オリンピズム講義要目

2007.9.9.清水重勇

第1節

 講 義 @…講義の目的…、受講上の注意…、講義のすすめ方…カード記入方法…資料配布…
 講 義 A…オリンピズムの概念…成文化された憲章の検討…、内外の研究状況…IOAとは何か…日本との関係…
 講 義 B…オリンピズムの成立過程…「スポーツ」から「スポート」へ…19世紀ヨーロッパの状態…
 講 義 C…、オリンピズムと体育…「スポーツ一般」と「身体一般」…体育の発達と「身体」概念の展開…

第2節

 講 義 D…第1節は抽象的概念…第2節は具体的実態…
  …オリンピズムの運動組織・人間…過去・現在…
 講 義 E…日本のオリンピズム運動組織…過去・現在…
  …体育史の1990〜1992年の連続シンポジウム「日本におけるオリンピック運動の歴史」…
  …最新の研究動向…田原さんの調査研究…小石原さんの史料研究…
  …書画機をフル活用して講義をすすめる…
 講 義 F・G連続…1986年IOC制作の3巻のビデオテープ(文藝春秋社)におけるオリンピズムについて…
  …2005年CIPC制作のDVD「ピエール・ド・クーベルタン、過去と現在」の上映…
  …配布した解説文の資料に沿って説明しながら…
  …休みなしに…3・4人のグループで感想をディスカッション…、その結果にもとづいて本日の受講レポートを記入させる…

第3節

 講 義 H…第1・2節の総ざらい…文脈化…
  …《諸スポーツ》と《ル・スポール》…
  …IOC…IOA…CIPC…JOC…JOA…における概念の食い違いはあるか?…
  …しげさんのサイト「クーベルタン塾」の紹介…ひとつの日本オリンピズムとして…
 講 義 I…クーベルタンの生涯と業績…教育と体育の改革運動…、提出物の点検…
 講 義 J…クーベルタンのオリンピズム…人間観・歴史観・文化観…クーベルタン翻訳ブックの講読…
 講 義 K…講義I・Jのおさらい…
  …「スポーツと近代教育」…論文講読…
  …19世紀初頭の価値観…フュナンブリズム(=スポーツ)…身体陶冶(=ジムナスティーク)…
  …気晴らし・娯楽(=非生産・堕落)…体育(=生産・向上)…、競争(=非教育・惡)…
  …クーベルタンのオリンピズムの基本概念…Sport 普遍性・歴史性・文化性・人間性…
  …複数形のJeux(=Games)の国際化…ヘレニズムという普遍概念の現代化を掲げる競技会の復興…
  …その直面した問題…@アマチュア規定という技術問題…Aアテネという地元問題…B体育という身体問題…Cスポーツという概念問題…諸属性の混合体…D"Le sport"の文化問題(芸術・文学との融合)…E"Le sport"の歴史問題(スポーツ本能の文明史)…

  …宿題…「わたしのオリンピズム」…現代スポーツについて感じる問題点は?それは何が原因か?自分はどのように考え行動できそうか?…自分の価値観を疑えるか?

第4節

 講 義 L…21世紀のオリンピズム…、総ざらい…スクリーンに文脈を示し…本日の課題
  …《Le sport》はクーベルタンの人間観…、オリンピズムはル・スポールを具現する…
  …ル・スポーツは人間(=人類)の心の中にある《La sportivité》という性質を開花させる…
  …ラ・スポルティビテとは…《過剰》を恐れず真実を求める人間らしさ   …《Fair Play》とは全力を出そうとするアスリートの真実性…
  …人類文明史とはル・スポールの歴史である…
  …オリンピック競技会はオリンピズムの場…
  …オリンピズムはそこに《人類の春》を呼ぶ…
  …オリンピック競技会は《生命の真実さ》を見せる…
  …オリンピック競技会は「歴史を書くこと」…
  …「参加することに意義がある」…なぜか?以上の文脈に関連づけて考えを深めること…
 講 義 M…グループディスカッション…「我々○○班のオリンピズム憲章」…
  …講義Lのおさらい
  …ル・スポールはC.の人間観…、オリンピズムはル・スポールを具現する…
  …ル・スポーツは人間(人類)の心の中にある La sportivite という性質を開花させる
  …ラ・スポルティビテとは…過剰を恐れず真実を求める人間らしさ…Fair Play とは全力の真実性…
  …人類文明史とはル・スポールの歴史である…
  …オリンピック競技会はオリンピズムの場…
  …オリンピズムはそこに人類の春を呼ぶ…
  …オリンピック競技会は生命の真実さを見せる…
  …オリンピック競技会は歴史を書くこと…

  …唯一日本に定着しているオリンピズム…「参加することに意義がある」…
  …この文言を本講義全体の文脈に位置づけながら再考する…「なぜか意義があるか?」と問う…

 講 義 N…、小論文作成…

教 材

1. 「オリンピック憲章」2003年まで(英文・和文)
2. 「オリンピック憲章」2004年発効(英文・和文)
3. 田原淳子「各国のオリンピック・ムーブメントに関する活動状況」(JOA Times, 2005, no.28, p.19-22)、同じく英文抜刷
4. 「1880年の分類項目による《Sport関係》記事の当初の分類項目と記事数」(清水重勇「19世紀中期フランスのSport概念の変遷について」)
5. 体育史専門分科会編「日本におけるオリンピック運動の歴史(1〜3)」(1990-1992)日本体育学会体育史専門分科会連続シンポジウム(http://www.shgshmz.gn.to/gakkay/public_html/Jjindex.htm)
6. 小石原美保「戦前・戦後の日本の児童書(児童向け読み物)におけるオリンピズム」付表(2004.4.20. 国士舘大学)
7. 小石原美保「昭和初期の児童向け読み物にみるオリンピズムの日本的需要」(科研費報告書「21世紀オリンピズム構築のための基礎研究」2006.3.)
8. 清水重勇「しげさんのサイト Humanizing Sport」(http://www.shgshmz.gn.to/shgmax/public_html/hsport.html)
9. DVD映像と解説資料「ピエール・ド・クーベルタン、過去・現在」(Pierre de Coubertin: Yesterday and Today, Film by Michael Dittrich)
10.和田浩一「オリンピック研究センター・博物館視察報告」(科研費報告書「21世紀オリンピズム構築のための基礎研究」2006.3.)
11.清水重勇「クーベルタン塾」(http://www.shgshmz.gn.to/shgmax/public_html/coubertin/coub_juku_index.html)
12.清水重勇「クーベルタンと20世紀のオリンピズム」(科研費報告書「21世紀オリンピズム構築のための基礎研究」2006.3.)
13.清水重勇・随想資料(2000〜2006年)
14.清水重勇「21世紀のオリンピズム…クーベルタンに訊く」(JOAセッション、2006年12月17日原稿)
15.清水重勇「スポーツと近代教育」
16.「学校における《スポーツと平和》教育(道徳)の事例から」(森川貞夫「21世紀のオリンピズム…《スポーツと平和》の関係のとらえなおしの視点」(2004年11月3日発表資料より)
17.ベルンハルト・マイヤー、田原淳子訳「今後のオリンピック・ムーブメントに関する倫理的省察」(Information Letter of the International Pierre de Coubertin Committee, Jan. 2004, pp.27-41)
18.山本徳郎「スポーツは遊びの領域を去ってしまったか?…21世紀オリンピズムを求めて」(科研費報告書「21世紀オリンピズム構築のための基礎研究」2006.3.)
19.清水重勇「21世紀オリンピズム…ひとつの念仏…」(科研費報告書「21世紀オリンピズム構築のための基礎研究」2006.3.)

おわり